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秋の黒部峡谷
十字峡 下の廊下 山行報告
船窪小屋登山教室 2003秋
記念写真1 スノーブリッジを行く
記念写真2
 10月18・19日 レポート:寿子 >> 第2回はこちら
晴れ渡る 黒部の谷は 深々と
澄みし水面に 紅葉映して

とうとうと 交じり合う渓 十字峡 
ロマンの極み ここに有りきか

平成15年10月18日

小屋閉めから四日目、「船窪小屋登山教室、下の廊下山行」にアシスタントとして参加しました。

昨年は欅平上部にて岩崩れがあり、山行が中止された為か、今回は21名の参加者となりました。お父さんはヒザ痛の治療中で行かれない為、隊長は松原繁氏にお願いしました。サブリーダーは落合さんです。

扇沢駅発7:30分のトロリーバスに乗り、日電歩道に下ります。快調なペースで「楽しく行きましょう!」と言う松原リーダーを先頭に歩き出しました。
カエデやナナカマド、ハンの木等で鮮やかに彩られた快晴の黒部平は、秋真っ盛りです。軽やかに慎重に歩調は早めに、足はしっかり上げて歩きます。小さな石や木の根につまずいて転んだりしたら、下は地神の谷です。下流に向かって歩いているので左側の岸壁に張ってあるロープやワイヤーにつかまって、注意しながら歩調を早めます。

紅葉の美しさに見とれている暇はないのですが、秋の色彩にどっぷりと漬かりながら歩いているのですから、何とも至福の山行といえますね。80分に5分のペース配分でしょうか。一息入れるのはその時だけ。後はせっせと歩いて、阿曽原小屋にPM4:00到着を目指します。

1年中で一番混むこの季節です。阿曽原小屋は満杯でした。佐々木オーナーにビールの差し入れをいただき、疲れを癒します。男女順番で露天風呂に入り、6:30夕食、7:30就寝となりました。

平成15年10月19日

昨夜の雨は上がりAM4:00発、折尾谷にて朝食をとり、欅平駅10:04発のトロッコに乗り、宇奈月よりマイクロにて親不知観光ホテルの天険レストランにてタラ汁定食を食べ、2003年第一回下の廊下登山教室は無事終了しました。

第二回は娘の優子が初めて参加します。彼女の山行記録を楽しみにお読み下さい。
松澤寿子

紅葉の山
連なって
紅葉の十字峡
記念写真
 10月25・26日 レポート:優子
船窪小屋ファンの皆様、初めまして。3番目の娘、優子と申します。
昨年の秋、松澤家の末っ子長男、宗志(シュウジ)さんのお嫁さんとなりました。
私たち親子4人が暮らす自宅の玄関には、縦に長い大きな額縁に入った1枚の写真が飾られています。そこには素晴らしい紅葉と見たことも無い絶壁がどか〜んと映し出されているのですが、近づいてよ〜く見てみるとなんとその崖っぷちを歩いている人の姿がアリンコのように小さく映っているではありませんか!「こんな場所を歩く人もいるんだ〜」と感心して見ていましたが、まさか自分がその場所に立つ日が、しかもこんなに早く来るなんて思ってもいませんでした…。 ずっと"白衣の天使(笑)"だった私は山歩きなどしたこともなく、この夏、船窪小屋荷揚げ作業の際に初めてヘリコプターに乗って小屋を訪れました。
写真で見ていた景色そのままのひっそりとした小屋の佇まいと、写真では感じ取れない自然の存在感に圧倒され、鳥肌が立つほどの感動をたくさん味わって帰路につきました。私の初めての山歩きは七倉岳の『下山』。自分の足で苦労して登ることをしなかったのでその苦闘は想像以上!歩きたいのに足が出ない。1歩出れば靴底がズルっと滑って尻もちドスン。自分の体が思い通りにならないもどかしさと、自分だけがヘロヘロになっている悔しさと、もう歩きたくないという辛さとで涙がポロっとこぼれそうになったとき「もう終わりだぞ。がんばれ」と声をかけてくださったのが、今回の下の廊下登山教室リーダーである松原さんでした。

平成15年10月25日(土)

前回アシスタントとして参加した母に代わり、本来なら息子である主人が参加するところ村の大切な行事に役員として参加しなければならず、一番ヘボヘボのド素人であるこの私が大役を務めることとなりました。何とも頼りにならない参加者で二回目のグループの方には申し訳ない思いでいっぱいでしたが、ベテランの皆様の暖かい支えのおかげで私も最後まで歩ききることができました。この場を借りまして、メンバーの皆様本当にありがとうございました。

まだ暗い早朝5時、母と夫に見送られ父と共にベルグハウスを出発。扇沢駅に到着した頃には朝日が眩しく、最高の天候の中、あの輝く紅葉を目指し集結したメンバーが顔を揃えました。静岡からお越しの皆さんはなんと扇沢駅駐車場でのテント泊だったそうです。お勤めを終えられた後、この北アルプスの麓を目指して出かけてこられたのでしょう。強い意気込みを感じずにはいられませんでした。

改札口の前に並び社長のお言葉を聞きながら「明日の今頃、私の中にはどんな感動があり、どんなことを思っているんだろう」とワクワクするような思いで自分自身の姿を想像していました。「行ってきま〜す」と父に元気に手を振りトロリーバスに乗り込みました。揺られること15分。目の前に、雪を被り朝日を燦々と浴びて輝く後ろ立山が姿を現しました。シンと冷えた空気の心地よさと目前に迫る雄大な山々の存在感は、今でもしっかりと覚えています。
少し下り、広い場所へ出たところで改めて松原リーダーよりお話がありました。

「自分の命は自分で守って歩くこと」

この言葉を聞いた瞬間、あの玄関の絶壁の写真が頭をよぎり、ハイキング気分になりかけていた自分に渇を入れられたようでした。そして最後に「さあ、憧れの下の廊下です。どうか皆さん、楽しんで歩いてください」と力強く笑顔で発せられたリーダーの言葉に、ヘナチョコながら「よ〜し!」と気合を入れました。

サブリーダー村重さんのすぐ後ろを初心者組の私と大阪からお越しの吉川さんご夫妻が続き、その後に山歩きの経験豊かな皆さん15名と松原リーダーが続く、総勢20名の行列が下の廊下制覇を目指してスタートしました。

足元には枯れ落ちた葉が敷き詰められ、ザクザクと柔らかい音が響きます。目に飛び込んでくるのは、写真ではとても表しきれない鮮やかな赤、黄、緑。そして山の頭を覆う雪の白!雲ひとつ無い真っ青な空をバックに浮き上がるように迫ってきます。「うわ〜」「すご〜い」とそれ以外に言葉が見つからず、思わず同じ言葉ばかりがため息のようにもれていました。大きな山の中腹には、ザックを背負った人が虫の行列のように小さく1列に続いています。「あそこを私も歩くんだなあ」と思いながら1歩1歩、前へ前へと進みました。

「ここからしばらく緊張が続きますよ」という村重サブリーダーの言葉が後ろへ後ろへと伝えられ、気を引き締めて進みます。日の当たらない所では霜が降り、崩れた足場に渡してある板が凍っていて滑ります。「ここ、滑るから気をつけてね」と皆が声を掛け合いながら"自分の命は自分で守る"山行は、最後まで続けられました。

だんだんと高さを増し、足元は枯葉からガレ場へと変わります。人が一人歩けるだけの道幅。左は石の壁。右は…落ちたら命はまずないだろうという谷。しかし観光放水が終了した黒部川は川底まで透けて見えるほどのきれいな水で、いつの間にかその高さにも慣れ、リーダーの言葉どおり周囲の景色を眺めながら楽しみながら歩くということができるようになっていました。水平歩道が続くので時には楽しそうなおしゃべり声も聞こえ、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込みながらしばらく軽やかに歩きました。

休憩をする場所も無いためただひたすらに歩く歩く。人生30ん年。こんなに歩いたことはありません。後ろを振り返れば、松原さんはポッケに手を突っ込んで鼻歌交じりで歩いています。見渡せば確かに私が一番若いのですが、一番へこたれているのはまぎれもなくこの私。母が持たせてくれたデジカメを松原さんに託し、ヘッピリ腰で揺れるつり橋を渡る姿や最高の紅葉をカメラに納めていただきました。

出発から8時間。最後の力を振り絞って足場の悪い急な坂を降りきると、そこに阿曽原小屋がありました。山小屋は船窪小屋しか知らない私にとって、この小屋での一晩は感動と驚きの連続となりました。

ビールの自動販売機があり、しかも眩しく電気が点いているのにまず感動!ごったがえす人の多さにびっくり!オーナーに母から預かった船窪小屋50周年の記念手拭いをお渡ししたくて声をかけようとするけれど「あ、あの…」とそこまでは声になっても「すいませーん」と頭の上からかけられる大きな声にかき消され、しまいにはオーナーに「後にして」と言われる始末。そりゃそうです。100人近い人々に食事と休息の場を提供しなくてはならないのですから…。機会を待つことにしてお部屋へ入りました。あとでわざわざ佐々木オーナーがお部屋へと来てくださり、無事手拭いをお渡しすることができました。

お風呂があるのにも感動!なんと露天風呂に入れるとのこと。汗びっしょりの体とすでに筋肉痛が始まっている両足のためにすぐに入ることにしました。林の中を下っていくとモクモクと湯気が立ち上がっており、大勢の女性陣が疲れた体を癒していました。更衣室はもちろん、目隠しするものすらない自然の中の露天風呂。初めて会う人ばかりなのに自然と話が弾みます。
吉川奥さんの足の親指には大きな豆がプックリとできていました。「山を下るときには自然と足の前方に力が入るもの。なるべく足の裏全体を付いて歩くといいんですって」と教えて下さったご婦人がいらっしゃいました。テント場泊まりの女性は「私たちは今夜はイタリアンなのよ」ととても楽しそうに話してくださいました。脱いだ洋服を並べた板がある所まで素っ裸に登山靴で歩く女性の後ろ姿、、、。普段絶対に目にすることのない何とも愉快な光景を私なりに楽しみながら「明日も頑張って動いておくれ」と祈るような気持ちで、ずっしり硬くなった両足をお湯の中で揉んであげました。

電気のついた食堂にはテレビまで映っていてこれまた感動!「今夜も食堂で寝なくてはならない方が20名ほどいます。皆さんの食事が長引けばその方たちの睡眠時間はどんどん短くなります。だから食事は今から20分以内に済ませてください!」というオーナーの言葉にびっくり!でも、ツヤツヤの御飯とカレーが本当に美味しくて、あっというまにペロリとたいらげてしまいました。ついでに、ヒューズが飛んで食堂が真っ暗になった数分間、厨房からこちらに向けて懐中電灯で照らしてくださった小さな明かりの中の食事はまた楽しい体験で「船窪小屋の夕食って毎晩こんな感じよね」なんて話しながら手を休めることなく食べていました。

阿曽原小屋には公衆電話もありこれも感動!夕方6:30、夕食を終えてから早速ベルグハウスへ電話をし、主人と母に全員無事到着したことを報告しました。お部屋へ戻るとすでに大勢の方が布団に入り、いびきも聞こえています。この行動の素早さにまたまたびっくり!1枚のお布団に二人づつ入り、今カレーライスを食べたばかりというこの状況の中なのにです。さすがに山に慣れた皆さんです。すぐに寝つけてしまわなければ過酷な登山はできないのだとこの時初めて知りました。

平成15年10月26日(日)

翌朝3:20。あっという間に全員が起床し出発の準備に入ります。まだ寝ぼけ眼なのは私だけ…。パキパキと動く皆さんの動きの早さに圧倒されつつ、靴の紐を締めました。

4:00、阿曽原小屋を出発。ヘッドランプの明かりの中、生まれて初めて真っ暗な山道を歩きました。黙々と2時間ほど歩き、少し空が明るくなってきたところで阿曽原小屋さんで作っていただいた朝食のお弁当をいただきました。

2日目は少し小雨がパラつく中の山行となりましたが、輝く紅葉の美しさは昨日と変わらず、時には足を止めてその美しさを堪能しながら楽しく前へ前へと進みました。
そして9:20。全員無事に欅平駅へと到着。真っ先に到着していた松原リーダーの元へ最初に着いたのはなんとこの私でした。「みんなのキップを買う」という大仕事があったので「キップ、キップ」とだけ思いながら歩いていたら弱音も出てくる隙はなかったようです。「いや〜、がんばったなあ。よくやった、よくやった」と松原さんに迎えられしっかりと握手をしました。この時30kmという道のりを歩ききることができたことを改めて感じ、「ありがとうございました」と言いながら胸が熱くなりました。
大きな岩盤を砕いて作られた、人が歩くためのこの長い長い道。「今、大変だと思って歩いているだろうけども、この道を作った人達のことを考えてみろ。それはそれは大変なことだったろうと感じるだろう。人間ってものは本当にすごいことができるもんだ」と話して聞かせてくださった松原リーダー。その言葉を聞き、出来上がった道の上をただ歩くだけなのに「辛い」「いやだ」「もう帰りたい」なんて心の中で何度も思っていた自分の小ささ、未熟さを感じました。
紅葉の綺麗さはもちろんのことながら、山、空、空気、歴史や自然の力を感じながら自分の足で歩くこと。山歩きの魅力を少し感じとることができた二日間でした。そして、最近何をやっても自信が持てなかった私という者に対し「やればできるじゃん!」と、久しぶりに褒めてやろうと思うことができました。

誰一人怪我をすることもなく、すがすがしい笑顔で元気に終了できたことが何よりもうれしいことでした。膝痛のため行けなかった父に代わってリーダーを引き受けてくださった松原さん、そして落合さん、村重さん、本当にありがとうございました。
節目の50年。下の廊下登山教室も大成功に終わり、両親にとっても今年は最高の1年になったことと思います。
参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様と感動を共有できたこと、ずっとずっと忘れません。
下の廊下を1歩1歩あるいたように、これから先の人生、私だってやればできるという自信を胸に、自分の足で、1歩づつ1歩づつ歩んで参りたいと思っております。

松澤 優子


PS,ちなみに今回試しに付けていった万歩計の数値は「58,002歩」になっていました。。(チョットは痩せたかも。。(^_^;)

つり橋
記念写真
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水平道を行く
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紅葉の山
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